TSUMATABI SUPPORTER妻旅サポーター

TSUMATABI SUPPORTER 09
KOUYA/FUTABA TAKAHASHI

妻旅サポーター:09 髙橋 耕也さん/二葉さん
サポーターテーマ:ものづくり

髙橋 耕也さん/二葉さん
「愛妻の丘」を温かく彩る、
廃材アートが生まれたワケ

愛妻家の聖地・群馬県嬬恋村のシンボルスポット「愛妻の丘」。絶景を見渡せることで有名なその丘のもう一つの見どころが、メルヘンな世界観で、不思議な魅力を放つオブジェの数々です。廃材を使ったそれらのユニークなアートを手がけているのは嬬恋村在住の廃材アーティスト・Kouyaさん、妻でマネージャーの高橋二葉さんです。Kouyaさんが廃材アートを始めた理由や「愛妻の丘」のオブジェへのこだわり、夫婦でものづくりに取り組む思いまでを伺いました。

廃材アーティスト、誕生

Kouyaさん)子どものころから、自動車や飛行機など「エンジンで動くもの」に夢中でした。とくに好きだったのがバイクです。大学卒業後は航空整備士やアンカー工、カメラマンなどの職に就きながら、念願だったバイクの海外ラリーに出場。勝負の世界は大きなプレッシャーとの戦いでしたが、心から生きている実感がありました。しかし長年の腰痛が悪化し、バイクに乗れなくなります。喪失感から立ち直り、新しいやりがいを見つけた場所が「雑誌」でした。アウトドアブームが到来する中、アウトドア雑誌に連載コーナーを任されることになるんです。家族で楽しむ「ものづくり」をテーマに、オリジナル作品の企画から、記事執筆、写真撮影までをすべて一人で担当。作品のアイデアが湯水のごとく湧き出ることには、自分でも驚きでしたね。ピーク時は、DIY雑誌など毎月5社で連載を抱えるほど多忙な毎日を送っていました。

二葉さん)廃材を使った「作品」を最初に見たのは、彼が腰の手術を終え、自宅療養している時です。夕方に私が仕事から帰宅すると、クーラーの下で何か動いている物がありました。よく見ると「アルミ線でつくられた釣り人」で、クーラーの風で釣りをするからくりになっていました。創作の理由は、ただ私を驚かせたいという出来心から、とのこと。それからしばらくして、彼がDIY雑誌を連載していた頃、仕事とは別にさまざまな「作品」が家中を埋めつくすように生まれていったんです。

廃材は、金属、ドラム缶、電子レンジのモーターなどの不要になった物から、流木などの自然素材まで、実にさまざまな物が使われていました。そして作品キャラクターたちの表情や動きが豊かで、きちんとした世界観も感じ取れ、私はすっかりツボにはまり、ファン第一号になったんです。インターネットの普及により彼の雑誌の仕事も減り、将来をどうしようか考えていたある日、工房で製作した「作品」に囲まれた彼がボソっと「これ、売ってみたいんだよね」と呟きました。私はその場ですぐに賛成。「廃材アーティストKouya」の始まりでした。



「もったいない」を価値に変える

二葉さん)まだ子どもが幼い頃。彼の作品を多くの人に知ってもらうため、時々アルバイトをしながらフリーマーケットやアートフェアなどを探しては出展・販売する日々を送りました。私がお客さまへの対応を全面的に担当していたのは、作品に対するネガティブな言葉を深く受け取めすぎてしまう繊細な彼を思ってのこと。実際、「こんな物に何の価値があるんだ」と厳しいことを口にする方もいましたが、私はあまり気にせず地道に売り込みを続けました。


その後、群馬県藤岡市にある住居へ引っ越し、家の一角にギャラリーをつくると、創作活動が本格化。さらに、創作の引き出しを増やす助けになればと、軽井沢にもアートギャラリーをオープンしました。多額の借金を抱えはしましたが、私が彼の作品の価値に自信を持てた貴重な時間だったと思っています。その時のファンの方々が、いまも私たちの作品を求めてくださっています。嬬恋村に越してきたのは、2005年です。軽井沢のギャラリーに近かったことがきっかけの一つでした。村に移住して少し経った頃、村役場から声がかかり、始まったのが「愛妻の丘」のオブジェづくりです。

Kouyaさん)最初につくったのは、丘の頂上に立つ「看板」です。最もこだわったのは、丘の周囲の美しい自然風景や丘に漂う素朴な雰囲気によく馴染むデザインであること。「看板」の板は、自分が海で拾ってきた流木です。金属の廃材でできた「小人」のキャラクターは、作品の主人公。「看板」以降に手がけた、鐘、スタンプ台、愛妻ポスト、望遠鏡、嬬恋マップ、ハグお立ち台など、「愛妻の丘」の全オブジェに登場しています。それぞれにどんな物語が込められているのか、想像して楽しんでみてください。


二葉さん)彼が廃材でアート作品をつくる根本にあるのは、「もったいない」「いつか出番が来る」という思いなんです。彼は常日頃から倹約家で「人が一生で使える物は、ほんの一握り。まだ使える可能性があるなら、捨てるのではなく、応用して何かにつくり変えてあげたい」という思いがあります。ただ朽ちた素材の風合いを活かすだけでなく、その物ならではの役割を見出すことに最大限の工夫を凝らしています。だからこそ、彼の作品は物への愛情に溢れた、あたたかさがあるのではないかと思います。



作品は、ふたりでつくる

Kouyaさん)廃材でつくった作品の数は、累計5万点を超えます。現在は、廃材を使う創作だけでなく、リノベーションや新品の材料だけで門扉、表札などの実用的な物のオーダーメイド製作も手掛けています。自分がいまのようにアートで食べていけて、やめずに続けられているのは、100パーセント奥さんのおかげなんです。

作品づくりに際してのお客さまとの対応を全部やってもらい、つくることだけに集中できる環境にいられるのはもちろん、そもそも自分にアーティストとしての価値を見出してくれたのも奥さん。趣味感覚でつくったにすぎない廃材を活かした作品を「すごい!」「売れるよ!」と褒めてくれたのがとてもうれしくて、その喜ぶ顔が見たいという気持ちがいまもずっと続いているんです。


二葉さん)これまで夫婦で工夫をし尽くし、何とか生きてこられましたが、振り返れば、時代や周囲に流されず、いつも前だけを見させてくれる彼のセンスや技術、完成した作品に、私は支えられてきたと思っています。嬬恋村に住み始めてから10年以上が経ちました。いままでは前に進むことに必死で周りのことを気にする余裕がなかなか持てませんでしたが、今後は、癒しを与えてくれる嬬恋村に感謝できるような活動もしていけたらと思っています。あわせて、「工房ものずきんミュージアム」の進化も続けていきたいと思います。


工房ものずきんミュージアム
住所:群馬県吾妻郡嬬恋村大笹2194‐11
TEL:080-5025-2872(担当:高橋二葉)
MAIL:fwpb8213@nifty.com
ウェブサイトはこちら

●「工房ものずきんミュージアム」にお越しの際は、お電話orメールにて事前にお問合せください。(日によってクローズしている場合がございます)

●作品は、宿泊施設「嬬恋の宿 あいさい」でも購入できます。
嬬恋の宿 あいさい
[住所]群馬県吾妻郡嬬恋村大字干俣2401
[TEL]0279-96-1280
ウェブサイトはこちら

[ 嬬恋村を訪れるご夫婦にメッセージ ]

嬬恋村は四季折々様々な癒しがあります。春から夏にかけては動植物たちの息づかいが感じられ、嬬恋村の農業も始まります。その手の届きそうな優しい自然が嬬恋村の魅力です。この生命を感じられる地で二人だけの思い出を作っていただきたいと願っております。

髙橋 耕也さん/二葉さん

妻旅サポーター09 : Kouyaさん(髙橋耕也)/廃材アーティスト:二葉さん (髙橋二葉)/マネージャー・工房ものずきん代表

2005年、群馬県藤岡市から息子二人と共に嬬恋村に移住。廃材を用いたアート作品を夫婦二人三脚でつくりながら、2009年以降、「愛妻の丘」にあるオブジェすべての製作を手がける。創作活動のほかにも、看板、門扉などのエクステリア製作やリノベーション、TVやイベントの舞台装飾や企画コーディネートなど、幅広い領域でものづくりに従事。近年では、地域活性に伴う行政からの依頼を多数請け負っている。Kouya氏は、SDGsの観点で注目されるアーティストの一人でもある。