TSUMATABI SUPPORTER妻旅サポーター

TSUMATABI SUPPORTER 06
EIICHI SHIBUSAWA

妻旅サポーター:06 渋沢 栄一さん
サポーターテーマ:流通

渋沢 栄一さん
嬬恋農家と旅する夫婦をつなぐ
あさまのいぶき代表の未来図

2020年8月、嬬恋村に新たにオープンした農産物等直売所「あさまのいぶき。その経営を担うのが、渋沢栄一さんです。渋沢さんは嬬恋村民なら誰もが知るスーパーマーケット「卸売センター サンエイ」の代表取締役社長でもあり、村の流通・小売を先頭に立ってリードし続けています。そんな渋沢さんが「サンエイ」の社長になった経緯をはじめ「あさまのいぶき」を営む上での思い、そして嬬恋村の未来像とは…。そのクールな頭とホットな胸の内に迫りました。

偉大なる父、託されたバトン
「サンエイ」開店日の様子
(左から4番目が初代社長の父)

僕の父は、スーパー「サンエイ」の創業者であり初代社長でした。「サンエイ」は、嬬恋村に3件あるスーパーの1つで、今年で開店45年を迎えます。僕は保育士になりたかったので、父の後を継ぐ気はありませんでした。しかし、厳格な父には絶対服従だったこともあり、気づけば後継者になるレールの上を歩んでいました。20代半ばまで「サンエイ」と丁稚奉公先のスーパーを行き来しながら修行する日々の中、「サンエイ」が経営の危機に瀕したこともありました。それでも、父は村内外のお客さんや従業員、僕たち家族のために必死の思いで「サンエイ」を守り抜いたのです。そんな父から次期社長になるよう言い渡されたのは、僕が29歳の時のこと。以来10年以上、父が一代で築き上げてきた店の名に傷をつけたくない一心で、不安や重圧に潰されそうになりながら暗中模索が続きました。

「サンエイ」の外観(創業当時)

僕自身、経営者に向いていたとは思わないですが、信じてついてきてくれた従業員をはじめ、「人」との縁に恵まれながら、つねに大きな支えがあってこそ何とか続けてこられました。そしてようやく、経営環境や労働環境、スタッフ教育など、あらゆる観点から自分の理想形とするスーパーになったと実感できるようになりました。そんな中、「あさまのいぶき」の話が舞い込んだのです。



「あさまのいぶき」に懸ける思い

「嬬恋で新たな小売業が始まる。しかも、その店は『嬬恋』の冠を背負って展開される」。当初は、誰が手を挙げるのかと様子を伺っていました。しかし、次第に僕らならスーパーの運営で長年培ってきたノウハウや知見を活かせるし、村の新しい未来づくりにもつながることはやりがいも大きいだろうと思い、運営することを決めました。そして、2020年8月に農産物等直売所としてうまれたのが「あさまのいぶき」です。ちなみに、「あさまのいぶき」という店名はとても気に入っています。店外からみえる名峰・浅間山の名があることにより嬬恋らしさが感じられ、力強さや期待感もよく表現されていると思います。

「あさまのいぶき」の最大の魅力は、村内の多種多様な農家さんがつくる、味・見た目のバラエティが豊富な野菜と果物がこの1店舗に集まっていることです。キャベツ一つとってみてもさまざまなおいしさや形、大きさ、色合いなどのバリエーションの違いに驚いたり、楽しんでいただけると思います。

この店を営むにあたり意識していることは、「農家さんファースト」な直売所でありたいという点です。商品パッケージには必ず農家さんの名前を記載していますが、これにより、農家さんとその商品にファンがうまれるようになればと。結果として、同じ種類の商品でも価格差が生じますが、そもそも、各々の農家さんで農作物づくりに注ぐ情熱や作り方、品種や畑も違うのに、それを一律の価格で売るのはちがうと思っていて。商品に自分の名前を冠することでより高い品質がうまれ、単価がアップする。相場が下がった時も一定価格が維持されるような形にできればと思います。また、おいしい野菜や果物をつくるのは得意だけど、なかなか売れずに困っている農家さんの受け皿になり、力になりたいという思いもあります。だから、ただ売り場を用意するだけではなく、商品売上の向上のためにアドバイスをしたり、農家さんの生産効率を高めていけるように微力ながらサポートもしています。

そのような形で、「嬬恋の農産物っていろいろな種類があるけど、どれもおいしいよね」と思ってもらえる直売所づくりを進めていきたいです。
嬬恋は、キャベツをはじめ高原野菜はすべて秋までに収穫・販売を終え、冬に売るものが少ない村ですが、その中で「あさまのいぶき」は大きな挑戦を強いられます。冬でも営業を止めず売り場として開放し続けることで、結果としてハウス栽培だったり、新しい嬬恋の未来が開かれればいいなと強い期待を持っています。現在、「あさまのいぶき」の商品は通販展開に向けて動いていますが、それが実装されれば、来年はかなり面白くなると思っています。また、お土産売り場が少ない嬬恋ですが、「あさまのいぶき」をその代表的存在にすることが一つの使命です。



流通・小売のその先へ

将来、僕は村内に新たな「加工工場」がうまれたらいいなと思っています。具体的には、群馬県甘楽町の「こんにゃくパーク」のように大規模な観光工場をイメージしていて、民間と行政が連携しながら「加工」「観光」「小売」の一体化が実現されたら素敵だなと。というのも、嬬恋は原料となる農産物は豊富なのに、お菓子屋などの加工屋がない村。

これは、もったいないと思うんです。今後は、キャベツだけじゃない嬬恋の魅力や評判をつくり、嬬恋村のポテンシャルをどんどん開花させていくことも大事になってくると思います。そのためには加工の分野に踏み出すにせよ、販路の開拓が何より大事で、そこに僕が引き続き貢献できればと思います。これからも、流通・小売という領域に軸足を置きながら、少しでも嬬恋の力になっていきたいです。


嬬恋村農産物等直売所「あさまのいぶき」
住所 : 群馬県吾妻郡嬬恋村鎌原493-17
TEL : 0279-82-1283
公式Facebookページはこちら

[ 嬬恋村を訪れるご夫婦にメッセージ ]

嬬恋村の魅力は?の問いに困ることがあります。キャベツとか?と答えるしかできませんでした。他に何もないなと考え込んでしまいます。でも実はコレが嬬恋の魅力なのです!身構えず、何もしない、ゆったりとした時間を過ごしていただきたいです。そうすると、あら不思議!?居心地の良さに気付くはずです。そして見えていなかった嬬恋村の魅力にどんどんハマっていくと思います。ショートステイではなく、ロングステイで訪れていただく事を願っております。ボードゲームの相手ならいつでも呼んでください(笑)。

渋沢 栄一さん

妻旅サポーター06 :
渋沢 栄一さん eiichi shibusawa

嬬恋村出身。スーパーマーケット「卸売センター サンエイ」の創業者であり初代代表取締役社長である父の子として育つ。29歳で「サンエイ」の二代目社長として就任。その経験と実績を活かし、2020年、嬬恋村農産物等直売所「あさまのいぶき」の指定管理者を兼任する。嬬恋村の農家と消費者の架け橋となりながら、村づくりの活動も推進。趣味は、ボードゲーム。